新米学校司書がゆく!ぎばのブログ

本のページをめくるように、日々をワクワク過ごしたい。

メロンあめの種、のどかなわんわん村

こんにちは、ぎばです。

今日は、小学校低学年向けの本を二冊ご紹介します。

 

 

『みどりいろのたね』 たかどのほうこ 作・太田大八 絵

福音館書店 1988年発行 2021年第46刷

 

主人公まあちゃん(年齢不詳)のクラスでは、みんなそろって畑に種をまくことになりました。先生が一人5個ずつ緑色の種を配りますが、まあちゃんが種をもらおうとすると、こっそりなめていた飴玉が先生に見つかり口から出すよう言われます。そして右手に緑色の飴玉1個、左手に緑色の種5個をもったまま畑に行き、うっかりすべて畑にうめてしまうのです。さあ、種と飴玉はこのあとどうなるのでしょうか、というお話。

 

でも、なまけものの まあちゃんは、ちっとも みずを やらないのです。

「ほかの みんなは みず のんでいるのになあ…」

「ぼくらだけだぜ まだ こんなに ちっちゃいのって」

「やんなっちゃう」「ぶつぶつ」「ぶーぶー」

でも、たった ひとりは へいきのへいざ。みずを もらえなくたって へのかっぱ。(本文より)

 

イラストはどこか懐かしさを感じるのですが、種たちの会話がふきだしに書かれていたりして、画面構成がちょっと斬新。レトロな雰囲気だけど一周まわって新しい本なのかな、と思いきやへいきのへいざへのかっぱです。発行年や第46刷というところをみて納得でした。

 

種たちと飴玉は地中でいざこざするのですが、飴玉(メロンあめ)は、バカにする種(えんどう豆)に向かって「つまるやつか、つまらんやつか、いちどぼくをなめてみるがいい!」と啖呵を切り、えんどう豆の種たちにすっかりなめられていなくなってしまいます。そして収穫の時がくると、まあちゃんのえんどう豆だけさやのなかにメロンあめが入っている(!)のでした。なんとまぁかわいいお話。4歳から、となっています。文字数も少なく、ひらがな表記で読みやすいです。

 

お次はこちら。

 

『わんわん村のおはなし』 中川李枝子 作・山脇百合子 絵

福音館書店 1986年発行 2011年第19刷

 

主人公は、わんわん村に住むふたごの子犬テックとタック。探偵のお父さんと、優しいお母さんに愛情いっぱい育てられているわんぱく子犬たちです。わんわん村には色々な種類の犬の家族が住んでいて、子犬たちはいつも元気に”あなほり公園”やその周囲で遊んでいます。ある日、テックとタックとそのおともだちは、森で出会ったしらないおばあさん犬に、ひみつの約束をされます。そして、普段は入ってはいけないといわれている”いぬさらいの森”で、おばあさん犬に変装していた不思議なおじいさん犬に捕まえられてしまうのです。次々に子犬がとらわれて(といってもひどいことはされません。子犬たちは夢中で遊んでいて、つかまっているつもりもありませんから)、心配したお母さん犬たちが探し回り、探偵のお父さん犬の協力もあって、みんなで子犬を取り返します。おじいさん犬は子犬どろぼう団を作ろうとたくらんでいたのですが失敗。結局、村役場の公園課につとめることになり、今後は子犬たちのために面白い遊具を作るそうです。めでたしめでたし。

 

たくさんの子犬たちが無邪気にじゃれ合う様子、温かく見守るお父さんお母さんの様子に、読んでいる子どもたちは自然と共感できるのだろうなぁと思います。私の大好きな『ぐりとぐら』や『森おばけ』の作者さんですので、読む前からあの独特なぬくもりを期待していましたが、期待通りのぽかぽか具合でした。

 

買ったばかりのはずなのに空っぽのごほうびビスケットの缶を見て、お母さん犬がテックとタックに問いただします。

―――子犬たちは、ともだちの名まえをぜんぶいって、

「みんなで、とべ、くぐれをやったから、ごほうびビスケットを、ひとつずつたべたの。」と、せつめいしました。

おかあさんは、しっぽをおもおもしくひとふりすると、

「こどもが、かってにごほうびをもらってはいけません。ほら、今日のしんぶんに、ごほうびをもらいすぎると、わがままでがまんのできない、よわむし犬になるって、かいてありますよ。」と、わんわんしんぶんをひろげて、〈子犬のしつけ〉のページを、二ひきに見せました。(本文より)

 

この物語は字数が多く、全162ページありました。5才~小学校初級が対象となっていますが、5才で一人で読めたらすごいと思います。娘が「(表紙の)わんちゃんの絵がかわいいから借りてきた」と言っていましたが、低学年の子ががゆっくり時間をかけて読むのにちょうどいいボリュウムかと。

 

学校は春休み。お外は雨が降っている。お友達と公園で遊びたいのになぁ…という、ちょっぴり寂しい気持ちを吹き飛ばしてくれるような、元気いっぱい楽しい本でした。

 

学習の場、心のオアシス、どちらも大切です

いよいよ、今日は学年末最後の登校日。

同じクラスの子たちと楽しくパーティーして、あゆみをもらって帰ってくるはずが、娘突然の発熱により欠席となってしまいました。

パーティーでは新聞わくわくクイズ係としてクイズを出題するといい、司会やクイズを一生懸命考え練習していたのに…と、こちらまで残念な気持ちでいっぱいです。2年生もよく頑張りました💮

 

さて、私も就職まで残すところあと1週間となりました。なんだかソワソワしています。

そして今日は、娘が寝ている間にお仕事に関わる本をさっくりと読みました。

 

『いますぐ活用できる学校図書館づくりQ&A72』 渡辺暢恵 作

 

この本は、学校図書館に関わるあらゆる立場の人から寄せられた質問に著者が答える形で書かれており、私にとっては学校司書の仕事のイメージがより具体的になった本でした。学校司書の受験を決める前にも一度目を通しており、今回改めて公共図書館で借りてきて読んだというわけです。

 

学校図書館には、じつに多くの人が関わっています。司書教諭、図書ボランティア、もちろん児童生徒とその担任、保護者たちも含まれているそう。学校司書は基本的に各学校1名の配属であり、同じ立場の人は自分のほかにはいません。仕事を具体的に指示してくれる上司もいなければ、分担できる同僚や部下もいない。自ら考え、積極的に動かなくてはなにも始まりません。しかし学校という教育現場において勝手に動き回るわけにはいかず、学校の運営方針を理解した上で教員の方たちをサポートするような形で進めていかなければならないという…あぁ~ちゃんとできるかなぁ~。今更ながらハードルがあがってきてドキドキしています。

 

まずは、本に関する知識をきちんと身につけること。それから、学校全体の方針を見極めること。そのうえで、授業にどのように関わっていくか、新しい取り組みを考え、どのように実行してくかを考える。

なによりも、一番大事なのは早く学校に慣れることでしょうか。先生や児童たちと少しでも仲良くなり、自らの居場所を作り、味方を作ることから始めたい!ふぅ~大丈夫、気負わずゆっくりやろう。

 

そうはいっても、在校生たちは昨年度の続きなわけです。4月から学校司書が変わったからと言って、今までと全く異なるというのでは困るでしょう。

 

「新しく来た人、全然だめじゃん」

「つまんない」

「図書室もう行かない」

 

とかいうことになっては実にまずい。最低でもこれまで通り、できればこれまで以上におもしろいと思ってもらいたい!

 

焦ってはだめだけど、着実に前進できるような仕事がしたいです。

 

非常勤だし、マイノリティだし、あまりでしゃばっちゃいけないかな、という遠慮はしすぎず、しかし立場をわきまえ節度を持って。このバランスが難しそうな仕事だなと思います。

これから色々な場面で奮闘することになると思います。ブログを書く余裕もなくなってしまうかもしれないけれど、本の紹介は自分自身の練習のため、仕事のことは記録として残していきたいので、これからもマイペースに更新したいと思います。

 

まぁまぁ、あまり鼻息荒くしないで、と家族にたしなめられる今日この頃ですが、4月1日からは楽しんで頑張ろう。

 

 

 

 

 

福音館創作童話シリーズ:まっかちんとお手紙探し

こんにちは、ぎばです。

今日も今日とていろんな本を読んでいます。あと数日で忙しい日々が戻ってくるので、それまでにやりたいことがたくさん。撮りためたドラマも見ないといけないし、ほんとうはピクミン4もやりたいのですが、とりあえず娘が次々によさそうな本を借りてくるので一緒に読んでいます。

 

まずはこれ。

 

『ざりがにのおうさま まっかちん』 大友康夫 作

福音館書店より1991年第1刷 2019年第22刷 です。

 

はちのす保育園に通うこどもたちは、ざりがに釣りが大好き。ざりがにのことはまっかちんと呼び、日々手製の釣竿で先生と一緒に沼に通っています。主人公ののぞみはまだ一度も釣れていないため、どうにかして大きなまっかちんを釣りあげたいと頑張っていますが…というストーリーです。

 

これは実在する保育園の保育実践をもとに書かれた本だそうで、のびのびとした環境がこどもたちをまっすぐ育んでいる様子がみてとれます。じょうずにできないのぞみに、まわりのお友達たちが一生懸命応援したりアドバイスしたりするのも可愛い。保育園児らしい声かけがいじらしいです。

日常の、何気ないひとこまがそのまま描かれています。絵も多く、本文はひらがなで書かれています。小学校低学年向きですが、読み聞かせなら未就学児も楽しい一冊です。

 

次はこれ。

『きょうはなんのひ?』瀬田貞二 作

同じく福音館書店より、1979年初版です。

 

まみこという女の子が、学校に行く前にお母さんになぞかけをします。おかあさんがその場所に行くと、まみこが書いた不思議な手紙が。手紙は次の場所を示しており、おかあさんは次々と手紙を見つけていきます。そして最後に、全ての手紙にはしかけがあることを明かされて…まみこはいったい、何を伝えたいのでしょうか?という物語です。

 

まみこの手紙の文面と、楽しく手紙を探すお母さんのやりとりにほっこり。このお話にはしかけがあって、まみこからおとうさんおかあさんへの手紙のサプライズが主軸ですが、実はおとうさんおかあさんからまみこへのサプライズも用意されているのです。家族の愛が絵本の中にぎゅっと詰め込まれています。

 

この本は娘からの推薦本。「これ面白いからよんでみて」と手渡されました。

こういう本がおもしろいと感じるのはいいことだなぁ…母としてもなんとなく嬉しいものです。

 

そして、実際に昨年のクリスマスには、まみこのまねをしてお手紙探しを作ってくれて、夫と二人で家じゅうを探し回りました。宝探しゲームのようで楽しかったです。本を読んだ後に、家族で実践してみるのも面白いですね。

 

さて、きょうはなんのひ?というタイトルでしたが、リアルな今日は夫の誕生日。

おめでとう!ということで、今日のブログはおしまいです。

おばけやさんに行きたいな。たもつかわいい、おばけかわいい、ポンポ…好き

みなさんは、猫の手も借りたいって思うことありますか?

忙しくてやりきれなくて、誰かに手伝ってもらいたいなーと思うことです。

じゃあ、おばけの手を借りたい人います?

今日は『おばけやさん』という本を紹介します。

 

こんにちは、ぎばです。

今日は、娘が図書館で借りて読んでいた本を読みました。

 

『おばけやさん②ないしょのおしごとひきうけます』 おかべりか 作

偕成社から2012年に出版されたものです。

 

主人公は小学生のたもつ。親代わりのうさぎポンポーソ・ミステリオーソと、おばけと3人で暮らしながら、おばけやさんを営んでいます。お父さんお母さんもおばけやさんをやっているのですが、今はわけあって遠くの街に暮らしているのです。

おばけやさんは、おばけを貸し出すお仕事です。お留守番におつかい、犬の散歩など、あらゆるお手伝いが仕事として依頼されます。おばけは普段ビンに入っていて、仕事が終わるとごはんの代わりににたもつの子守唄を聴きます。さあ、今回はどんなお仕事が待っているでしょう?

 

この本は、不思議ですがなんだか懐かしい感じがしました。

2012年出版なので、そこまで昔の本というわけではありません。でもなんだろう…この昭和感。

挿絵がとても多く、途中に漫画風のコマ割りイラストがたくさん入っています。本文とは別にふきだしにかかれたセリフも面白いし、絵がとっても懐かしい感じなんです。

ストーリー自体はシンプルなのですが、主人公のたもつやその友達たちのキャラもいいし、おばけはかわいいし、うさぎはかわいくないけけど(笑)すごい安心感だし…商店街の人たちとの交流とか、学校の先生たちの雰囲気とか、全体的に昔懐かしい優しい温かい世界観なのです。読んでてにっこり嬉しくなる。

 

だいたい、親代わりのうさぎって!笑

このうさぎ、ごはんやおやつを作ったり、お客さんに麦茶を出したり、たもつの布団をかけなおしてやったりするんです。ほぼお母さんなんですが、設定としては男(?)らしく、「ポンポ、おとこのひとのここの毛なんていうの?(耳の前を指さしながら)」と聞くたもつに、「もみあげだ」と答え、「あらきさんてもみあげあるんだよ」と言うたもつに、「おれにもあるぞ」とにっこりして言うのです。え、待って、もみあげあるの?うさぎ?てか何のはなし?って思いますよね。気になったら読んでみてくださいおもしろいので。

 

本を読む前、娘に「『おばけやさん』って本借りてたよね。面白かった?」と聞きました。

「おもしろいよ」

「おばけを売ってるの?」

「おばけを貸してる」

「だれが出てくるの?」

「たもつっていう男の子と、うさぎ」

「うさぎ飼ってるの?」

「ううん、うさぎがたもつを育ててるんだよ」

「うさぎが…?」

「そう。でかいうさぎ」

…なにそれめっちゃ気になる!ということで読みました。つっこみどころ満載だけど、なんか妙にしっくりくる設定なのです。そしてあっというまに登場人物たちのファンになってしまいました。なんかいい!もっと読みたい!

 

シリーズもので全7巻あるようです。小学校低学年向けかとは思いますが、高学年になっても結構おもしろがって読めるかもしれません。半分マンガのような作りになっているので、本や活字に苦手意識がある子どもでも読みやすいと思います。

 

ポンポ、うちにきて今日の夕飯作ってくれないかなぁ。

「ばんめしは、たきこみごはんだぞー」

って、言ってもらいたいですよね。でかいうさぎに。

 

あしながおじさんとイマドキ読書、おやつはシュークリーム

こんにちは、ぎばです。

土日は暖かかったですが、また気温が下がっています。三寒四温。こうして少しずつ春が近づいてくるのですね。

さて、今日はこんな本を読んでみました。

 

あしながおじさん』 ジーン・ウェブスター作 / 谷口由美子 訳

岩波書店より2002年出版のものです。

 

作者のジーンは1876年にニューヨーク州で生まれました。あしながおじさんは1912年に出版された、彼女の代表作です。誰でも子どもの頃に一度は読んでいる、と言っても過言ではない古典児童文学です。

 

物語は、孤児院で育ったジュディという17歳の女の子が、ある資産家から援助を受け、大学生活を送るというものです。ただし援助をしてくれている人物の本名すら知らされず、学費や小遣いを援助する代わりに毎月手紙を送るようにと指示されジュディはそれに従います。生まれて初めて孤児院を出て、勉学に励み、友達を作り、大学生活をエンジョイする様を、”あしながおじさん”と名付けた支援者に向けて手紙に綴るのです。

 

内容はすべて、ジュディによる手紙の文面で構成されています。時に幸せいっぱいに、時に喧嘩腰に、事務的な文面もあれば、からかうような内容の時もあり、ジュディの感受性につい読者も笑顔がこぼれます。この文庫は小学5.6年生以上を対象としており、とても読みやすい文章でありながら、品格を損なわない丁寧な訳文で大人が読んでも読みごたえばっちりでした。私も子どもの頃に読んだことがあると思うのですが、ほとんど覚えておらず、今回真新しい気持ちで読み直すことが出来ました。

 

作品の中で、ジュディはとても大切なことを教えてくれます。

 

人生で最も大切なものは、はなばなしい大きな喜びなんかじゃありません。ささやかな喜びの中に、多くの楽しみをみつけることがとても大事なんです―――あたし、幸せになるほんとうの秘訣を見つけました。おじさん、それはね、今を生きる、ということです。いつまでも過去をくやんだり、将来を思いなやんだりするのではなくて、今、この瞬間を最大限に生かすことです。(本文より)

 

ジュディが大学で出会った友達は、みな家庭環境の良い裕福な家の娘ばかりでした。ジュディは自分が孤児院育ちであり、家族を持っていないことを誰にも打ち明けません。華やかなキャンパスライフを送る一方で、自らの境遇を忘れず、葛藤する場面もたくさん出てきます。しかし大学生活を送るきっかけをくれたおじさんには常に感謝し、また自らの努力を怠ることなくまっすぐに生きていく様子が、読んでいてほんとうにさわやかです。

 

自分が幸せであることに気づいていない女の子たち(ジュリアもその一人)を、あたしはたくさん知っています。幸せに慣れっこになっていて、気持ちが麻痺しているんです。でも、あたしはちがいます―――あたしは自分が幸せであることを、一瞬たりとも忘れてはいません。これからどんないやなことがおころうとも、ずっと幸せでいようと思います。いやなことさえ(歯痛でも)、おもしろい経験だと考えることにし、それがどんなものかわかってよかったと思えばいいんです。(本文より)

 

私も思わず自省の念にかられました。ほんとにね、その通り。現代を生きる私たちは、多くを望みすぎているようです。

 

この物語が書かれたころ、参政権が認められないなど女性は社会的弱者の立場にたたされていました。女は勉強などしなくてもよい、という時代です。ですが、ジュディは学ぶこと、本を読むこと、書くことに幸せを感じ、夢中になってそれらを楽しんでいます。ただ何となく日々を過ごすのではなく、やりたいことをどんどん見つけ、挑戦し、失敗したりしながらも立ち向かっていくジュディの姿は、現代の子どもたちにもきっと鮮烈に映るでしょう。小学校高学年という思春期の入り口で、ぜひとも(できれば親子で)読んでみてほしい一冊です。

 

そして、なぜいきなりこのような古典を手に取ることにしたかというと、この本の影響でした。

 

『ぼくは本を読んでいる。』 ひこ・田中 作

 

これは、あるベテラン学校司書さんの本でおすすめとして紹介されていた一冊でした。新しい本で2019年に出版されています。

 

主人公のルカは小学五年生の男の子。ある日、両親の本部屋で表紙カバーのついた古い本を見つけ読み始めます。それは、『小公女』や『あしながおじさん』といった古典児童小説で、現代の小学生の目には面白く、不思議で魅力的なものがたりにうつりました。ルカが本を読みながら考えたこと、感じたことと、実際の小学校生活や友達との会話、共働きで忙しい両親との会話などが並行して進んでいきます。作中には今と昔の違い(ネットが普及する前、スマホのなかった時代について)や、本の読み方(時代によって異なる訳者・訳文、わからない語彙を辞書で調べながら読むなど)に関わる要素も多く含まれており、とても読みごたえがある児童書でした。

イマっぽいな~と感じる登場人物たちのやりとりと、主人公が読みすすめる古典児童小説の熱量とが相まって不思議なボリュームを感じました。生クリームとカスタードクリームの両方がつまったシュークリームみたいな感じです。

 

本を読むことが、別の本を読むきっかけになる。読書の世界はつながっています。

それにしても名作はやはりすごいですね。時代を超えて、世代を超えて、読む人に何かを与えてくれるのですから。

『小公女』もいつか読み直そう、と固く心に決めた春の午後でした。

 

 

 

 

 

初めて読んだ”さんすうえほん”の魅力『ひとつぶのおこめ』

こんにちは、ぎばです。

昨日は、初めて配属校まで行ってきました。通勤時間徒歩10分だった前職と比べたら大変ですが、慣れれば大丈夫そう。途中に素敵なパン屋さんがあって、お昼ごはんに購入しました。おいしかった。

見慣れぬ街の見慣れぬ小学校ってなんだか不思議です。門から中を少しのぞいて、あまりウロウロしていると不審なので帰ろうとしたところ、校外学習帰りの小学生たちに遭遇し挨拶しました。一か月後にはこの子たちに本を読んだりするのかなぁなどと思いながら。

 

今日は、ずっと気になっていた絵本を娘に読み聞かせてみました。

 

『1つぶのおこめ さんすうのむかしばなし』 デミ 作 / さくまゆみこ 訳

光村教育図書 2009年第一刷 2021年第十二刷

 

インドのむかしばなしです。自分のことをかしこいと過信していたある王さまが、村人の作った米を飢饉に備えるといって毎年とりあげていました。何年か経ったある年、本当に飢饉に見舞われましたが、いざとなると村人に米を分けてやるのを嫌がり、村人はみな飢えに苦しんでいました。そんな中でも王さまは、宮殿に住む自分たちのためだけに宴会を開こうと準備します。そして米蔵から米が運ばれたとき、わずかに零れ落ちているのを村娘のラーニが見つけるのです。

あわててこぼれる米をスカートで受けながら、ラーニはあることを思いつきます。王さまにその米を返したラーニは、その行いを感心した王さまに褒美を与えられることになり、こうお願いするのです。

「王さまがそこまでおっしゃるなら、こんなふうになさってはいかがでしょう?きょうは、おこめを1つぶだけくださいませ。そして、30にちのあいだ、それぞれまえのひのばいのかずだけおこめをいただけませんか?あしたはおこめを2つぶ、あさっては、おこめを4つぶ、というように」ラーニは、いいました。(本文より)

 

そんなものでいいのかと了承した王さまは、日に日に増えていく米の量にだんだん慌て始めますが、約束通り30日間与え続けた結果、王さまの米蔵の米はからっぽ。そしてラーニは手に入れたおこめを村人全員にわけあたえ、王さまも改心してめでたしというものがたりです。

 

ストーリーはとてもわかりやすく、本文中には具体的な数字がたくさん出てきます。

2日で2粒、3日で4粒、4日で8粒…9日で256粒、12日で2048粒…21日で1048576粒…とうとう30日目には536870912粒の米を、256頭のゾウが運んでくるイラストは圧巻です。ページが屏風式に開くようになっており、そこに無数のゾウと両手を挙げて喜ぶラーニが描かれています。

 

数字が大きくなるにつれ、聞いていた娘はふふっと笑っていました。そして一番最後のページに、どのようにしてお米が増えていったのかが一覧になっており、すごいねーと言いながら一緒に読みました。

 

特にかけざんを勉強している2年生には特にぴったりだったようです。読み終わったあとの娘の感想は、「1粒ずつ足していくのだったら量を増やすのに時間がかかったと思うけど、かけるとあっというまだね!ばいって結構大きいからね」ということでした。もちろん、小学生なら他学年でもよし。大きい桁を勉強している学年なら声に出して読んでもらうのもいいし、実際に計算してみてもらうのも面白そうです。

 

全体のイラストも、インドが舞台ということでとても美しく、登場する動物や人物の衣装などから独特の文化を感じられました。ここから、インドについて調べてみるのもいいかもしれません。実物の米や升、米袋を用意して見せながら読めば、より一層質量を実感できるかもしれませんね。

 

仕事が始まったらいつか読んでみたいです。

 

二人のおばあさん/『リンゴの木の上のおばあさん』を読んで

こんにちは、ぎばです。

昨日は、仕事用かばんを購入しました。軽くてたくさん入りそうなリュックにしました。撥水加工されているので、自転車通勤中に少し降られても本を守れそうです。

あんなに時間を持て余していたのに、あっという間に3月も三分の一が終わりました。月日が流れるのは本当に早いですね。

 

さて、先日やっと図書館に行くことができ、例の借りられなかった児童書たちを借りてきました。1冊だけ読んだので、今日はそのご紹介をします。

『リンゴの木の上のおばあさん』 ミラ・ローベ 作 塩谷太郎 訳

岩波少年文庫2013年版を借りてきましたが、当時私が読んだのはおそらく学習研究社1969年版(ハードカバーで文字がもっと大きかった)ですね。

 

物語は、アンディという少年が主人公です。アンディにはおばあさんがいません。二人とも早くに亡くなってしまったからです。友達は、放課後におばあさんと遊園地に行ったり、遠方からたくさんのお土産を持っておばあさんが遊びに来たりするという話を聞いて、いつもうらやましく思っていました。ある日それを母親に打ち明けると、母親はおばあさんの写真を見せてくれます。そのおばあさんは、羽飾り付きの帽子をかぶり、花の刺繡の手提げかばんを下げ、流行おくれの長い服を着て、すそから白いレースの下履きがのぞいていました。それは、仮装行列で”おばあさんの仮装をした”おばあさんの写真でした。その後、庭にあるお気に入りのリンゴの木に登ってみると、先ほど写真で見たままのおばあさんが座っているではありませんか!それからふたりは仲良く、楽しく、様々な冒険を始めます。

 

どこからきたのかわかりませんが、たしかにアンディのおばあさんでした。あの白いまき毛、あの花のししゅうのついた大きな手さげ…。

「ハロー、アンディ。」と、おばあさんはいいました。

「ハロー、おばあちゃん。」と、アンディも、少しはにかみながらいいました。

「このリンゴ、まだすっぱいのかい?」と、おばあさんはききました。

「とてもすっぱいよ。よくみのってないのをたべると、おなかをこわすよ。」と、アンディはりこうぶっていいました。

「じゃあ、ひとつたべてみようかね。」と、おばあさんはばかなことをいって、まだ青いリンゴを枝からもぎとり、ガリっとかじりました。(本文より引用)

 

陽気で、お金持ちで、楽しいことを何でも一緒にしてくれるのは、アンディの空想のおばあさんです。遊園地ではしゃいだり、海賊と戦ったり、トラ狩りに行こうと誘ってくれるおばあさんです。

 

おばあさんは、なにかかわったものでもあるように、じっと電車の天じょうを見ていました。アンディも見あげました。でも非常ベルの皮ひものほかには、なにも見えませんでした。ひもはたるんで、電車の動きでゆらゆらゆれていました。

「アンディ。」と、おばあさんはそっと言いました。「わたしは、あのひもをひっぱってみたくてたまらないんだよ。」

「だめだよ。」と、アンディはびっくりして小声でいいました。「そんなことをしたら、ばっ金をとられるよ。」(本文より引用)

普通のおばあさんはそんな子供みたいなことを言いません。でも、アンディのおばあさんはこの後誘惑に勝てずひもをひっぱってしまいます。言い訳はちゃんとおばあさんらしくて笑ってしまいました。

 

そして重要なのは物語の後半。アンディの家の近所に越してきた、普通の優しいおばあさんとの出会いが描かれています。その人は腰が悪いため、引っ越しを手伝うなどおばあさんのためにアンディは自然と気遣いをします。するとケーキを焼いてくれたり、靴下の穴をかがってくれたり、おばあさんもアンディを孫のようにかわいがってくれるのです。

 

私はこの本に関して、主に前半の印象しかありませんでした。つまり当時小学生だった私は、「愉快なおばあさんとのワクワクするような日々が面白いなぁ!」と感じたのだと思います。でも、大人になって読んでみると、後半の実在するおばあさんとのかかわりがアンディにとってはむしろ重要なのだなと強く感じました。”おばあさん”とは、単に遊びに連れて行ってくれたり、おもちゃやおかしを買ってくれるだけの存在ではないということです。もっと小さな、細やかな温かい愛情を与えてくれて、時には助けたり気を配ったりと大切にしなければならない存在なのだということを、実のおばあさんを持たないアンディが自然と理解していく様が、優しく描かれていました。

 

小学校2~3年生向けとなっていますが、少し長いです。章ごとにわかれているので、一気読みではなく少しずつ読み進めていくのがちょうどよいかもしれません。おすすめです。

 

 

 

3月9日に祖父が天国へ旅立ってしまいました。91歳でした。

私は祖父母が大好きなので、大学生頃までたまに遊びに行ったり泊まりに行ったりしていました。大人になってからも、時々行っては一緒にお酒を飲んだり、節目にはあいさつに行ったり、娘を見せに連れて行ったりと、割と密な関係だったと思います。

いつもにこにこしていて、口数は少ないけれどたまに冗談もいう人で、お庭の手入れとテレビとお酒の好きなやさしい祖父でした。せっかちでおしゃべりな祖母(86歳で健在です!)とは対照的で、二人のやり取りを見ているのも好きでした。

 

おじいちゃん、いままでありがとう!

これからも頑張るので、見守っていてください。