こんにちは、ぎばです。
今日は、小学校低学年向けの本を二冊ご紹介します。
『みどりいろのたね』 たかどのほうこ 作・太田大八 絵
福音館書店 1988年発行 2021年第46刷
主人公まあちゃん(年齢不詳)のクラスでは、みんなそろって畑に種をまくことになりました。先生が一人5個ずつ緑色の種を配りますが、まあちゃんが種をもらおうとすると、こっそりなめていた飴玉が先生に見つかり口から出すよう言われます。そして右手に緑色の飴玉1個、左手に緑色の種5個をもったまま畑に行き、うっかりすべて畑にうめてしまうのです。さあ、種と飴玉はこのあとどうなるのでしょうか、というお話。
でも、なまけものの まあちゃんは、ちっとも みずを やらないのです。
「ほかの みんなは みず のんでいるのになあ…」
「ぼくらだけだぜ まだ こんなに ちっちゃいのって」
「やんなっちゃう」「ぶつぶつ」「ぶーぶー」
でも、たった ひとりは へいきのへいざ。みずを もらえなくたって へのかっぱ。(本文より)
イラストはどこか懐かしさを感じるのですが、種たちの会話がふきだしに書かれていたりして、画面構成がちょっと斬新。レトロな雰囲気だけど一周まわって新しい本なのかな、と思いきやへいきのへいざ、へのかっぱです。発行年や第46刷というところをみて納得でした。
種たちと飴玉は地中でいざこざするのですが、飴玉(メロンあめ)は、バカにする種(えんどう豆)に向かって「つまるやつか、つまらんやつか、いちどぼくをなめてみるがいい!」と啖呵を切り、えんどう豆の種たちにすっかりなめられていなくなってしまいます。そして収穫の時がくると、まあちゃんのえんどう豆だけさやのなかにメロンあめが入っている(!)のでした。なんとまぁかわいいお話。4歳から、となっています。文字数も少なく、ひらがな表記で読みやすいです。
お次はこちら。
『わんわん村のおはなし』 中川李枝子 作・山脇百合子 絵
福音館書店 1986年発行 2011年第19刷
主人公は、わんわん村に住むふたごの子犬テックとタック。探偵のお父さんと、優しいお母さんに愛情いっぱい育てられているわんぱく子犬たちです。わんわん村には色々な種類の犬の家族が住んでいて、子犬たちはいつも元気に”あなほり公園”やその周囲で遊んでいます。ある日、テックとタックとそのおともだちは、森で出会ったしらないおばあさん犬に、ひみつの約束をされます。そして、普段は入ってはいけないといわれている”いぬさらいの森”で、おばあさん犬に変装していた不思議なおじいさん犬に捕まえられてしまうのです。次々に子犬がとらわれて(といってもひどいことはされません。子犬たちは夢中で遊んでいて、つかまっているつもりもありませんから)、心配したお母さん犬たちが探し回り、探偵のお父さん犬の協力もあって、みんなで子犬を取り返します。おじいさん犬は子犬どろぼう団を作ろうとたくらんでいたのですが失敗。結局、村役場の公園課につとめることになり、今後は子犬たちのために面白い遊具を作るそうです。めでたしめでたし。
たくさんの子犬たちが無邪気にじゃれ合う様子、温かく見守るお父さんお母さんの様子に、読んでいる子どもたちは自然と共感できるのだろうなぁと思います。私の大好きな『ぐりとぐら』や『森おばけ』の作者さんですので、読む前からあの独特なぬくもりを期待していましたが、期待通りのぽかぽか具合でした。
買ったばかりのはずなのに空っぽのごほうびビスケットの缶を見て、お母さん犬がテックとタックに問いただします。
―――子犬たちは、ともだちの名まえをぜんぶいって、
「みんなで、とべ、くぐれをやったから、ごほうびビスケットを、ひとつずつたべたの。」と、せつめいしました。
おかあさんは、しっぽをおもおもしくひとふりすると、
「こどもが、かってにごほうびをもらってはいけません。ほら、今日のしんぶんに、ごほうびをもらいすぎると、わがままでがまんのできない、よわむし犬になるって、かいてありますよ。」と、わんわんしんぶんをひろげて、〈子犬のしつけ〉のページを、二ひきに見せました。(本文より)
この物語は字数が多く、全162ページありました。5才~小学校初級が対象となっていますが、5才で一人で読めたらすごいと思います。娘が「(表紙の)わんちゃんの絵がかわいいから借りてきた」と言っていましたが、低学年の子ががゆっくり時間をかけて読むのにちょうどいいボリュウムかと。
学校は春休み。お外は雨が降っている。お友達と公園で遊びたいのになぁ…という、ちょっぴり寂しい気持ちを吹き飛ばしてくれるような、元気いっぱい楽しい本でした。